私自身帰国子女ではありませんし、英語がペラペラということももちろんありませんが、英語を書くこと、特に研究論文のwritingにはそこそこ自信があります。若い大学院生・研究者の皆さんには役に立つ記事も書けるだろうということで、英語論文を書く上で私が大事だと思うこと、参考になりそうなことをまとめています。
本記事では英語論文における時制の使い方について説明します。

英語論文における時制
時制というと、素朴に考えれば「いつ」行動したかだけなので簡単なようにも思えますが、論文英語における時制は、思いのほか難しいものです。
皆さんも英文法として勉強したように、英語では時制の種類もたくさんありますが、ひとまず現在形、過去形、現在完了形の使い方を把握していれば、論文を書けるのではないかと思います。
それぞれの時制の使い方
それでは、現在形、過去形、現在完了形の英語論文における使い方についてそれぞれ説明します。
現在形
普遍の真理(理論的にわかっていること)
よく普遍の真理は現在形で書くと習うと思いますが、研究論文の場合には教科書に載っているような理論的なことの説明と考えればいいかと思います。半導体の導電率や化学反応速度が温度と共に上昇することなどは現在形で書けばいいということです。
図の紹介をする場合
いわゆるFigure 1 shows,,,,といった文章についてです。結果についてどのような時制で書くかということについては、後述のように、現在形派と過去形派に分かれるのですが、共通するのは図が何を示しているかの説明は必ず現在形だということです。
理論計算の方法を書く場合
通常、実験項や手法の項目を書く場合には過去形を用いることが多いですが、理論や計算の手法の場合には現在形で書くことが一般的です。理由は正直分かりません。
The electronic structure of **** is calculated by ab initio density functional theory methods.
図の中身を説明する場合【注意事項あり】
私は、自分の研究結果を示す図面の説明は現在形で書いています。私だけではなく、現在形で書くことが現在の主流です。
The intensity of peak A increases with increasing temperature.
不思議なことに、英語論文に関する様々な文献において、研究の結果は過去に起こったことなので過去形で書くと記載されています。しかし、実際の英語論文を精査してみると、現在形で書いている論文が大多数です(もちろん、分野にも依存するでしょう)。このことに関して実際に検証しているサイトもあります。
仮に、過去に起こったこと全てを過去形で書くべきであるのであれば、理論計算の結果も過去形で書くべきですが、理論計算の論文で過去形を使っている論文はほぼ見かけません。
では、常に現在形で書けばよいのかというと必ずしもそうではないと思います。上記サイトには、「再現性」があまりなさそうな結果の場合には過去形で書くのではないかと記載があります。私のアドバイスとしては、日本語で学会発表する際の説明で現在形で話しているか過去形で話しているかで決める、というものです。
私が学会発表する際、「このピークが温度と共に大きくなっていたことがわかります」などと過去形で説明することはありません。「このピークが温度と共に大きくなっていることがわかります」としゃべります。私の感覚では、現代の論文英語は口語に近付いていっている(Weを使うのもその傾向でしょう)ので、この判断基準が有効に思えます。もし、この基準で過去形で話しているようであれば、論文でも過去形で書くことが適切でしょう。
例えば、実際に起こった地震に関する研究など、データの測定時刻などがはっきりと意識されるような研究であれば、過去形を使うのではないかと思います。
過去形
過去形は過去のある時点での行動について説明する場合に使います。主にイントロダクションや実験項(方法)で用いられます。
過去の特定の研究について言及する場合
主にイントロダクションで使われますが、結果の項目で過去の別のグループや自分たちの研究内容に言及することがあります。特定の研究(論文)については明確に過去の特定の時点で出版されたものですので、過去形になります。
**** et al. reported that,,,,
一方で、より一般的な、例えば「シリコン太陽電池の研究」一般について言及する際には後述の通り、現在完了形で書くことが普通です。
また、上記の例文のthat以下の内容も時制の一致の原則から過去形になるはずですが、有名な理論やよく知られた事実であれば「普遍の真理」として現在形での記述もあり得ます。
実験項の説明
実験手法の説明は全て過去形で書くことが一般的です。前述の通り、理論計算の説明は現在形で書きます。
**** nanoparticles were synthesized by **** method.
研究社の「英語科学論文の書き方と国際会議でのプレゼン」という本の中では実験手法の説明も現在形で書くと書かれていますが、その他の私の知る英語論文に関する本では全て過去形で書くとされています。この本の著者は核融合科学研究所の教授ということで、この方の研究分野では現在形が一般的なのかもしれませんが、私は今まで実験手法を現在形で書いている論文に出くわしたことがほぼありません。ほとんどの皆さんにとっては、実験手順は過去形で書くという理解でよいでしょう。
現在完了形
現在完了は過去のある時間から現在まで継続的に行われている行動について使われます。イメージとしては下図のような形式になります。

このイメージの関係上、英語論文中で現在完了形が使われるシチュエーションはそれほど多くはありませんが、主にイントロダクションで使われます。
過去行われており、現在も行われている研究などについて言及するとき
これは主にイントロダクションで使われる用法です。過去の特定の研究ではなく、ニュートリノ、シリコン太陽電池、IPS細胞などが現在に至るまで継続的に研究が行われていることに言及する際に使われます。
**** have been investigated intensively due to,,,,
論文中での研究内容に言及するとき
また、著者たちが行った研究の内容について言及する際にも使われることがあります。イメージとしては論文を書いている間(現在)も含めて自分の研究が進行しているという感じでしょうか。
In this paper, we have developed 【新しい研究手法など】
We have investigated 【研究対象】
私自身や私の研究分野では上記のように現在完了形で書くことが多いですが、現在形や過去形で書く人たちもいます。
研究は過去に行ったものだから過去形が当然という考え方もあるかと思いますが、これは「客観性を保つため受動態で書くべき」という教えと同じで、「古い考え方」であると思います。実際、過去形は比較的少数派で、徐々に現在形が増えてきている気がします。
英語も時代と共に変化していくものですので、そういった変化に対応する必要があると思います。私のお勧めは、あなたの研究分野の比較的最近の論文を参考にしてその真似をすることです。ただし、指導教員に修正されるようであれば、それに従いましょう。正しい、間違いというレベルの話ではないので、無駄に争う必要はありません。
まとめ
本記事では、英語論文で用いる時制として、現在形、過去形、現在完了形について説明しました。ここに書いてあることを把握していれば、ひとまず論文が書けるのではないかと思います。このほか未来形なども論文で使われることもありますし、私は使ったことがないですが、もしかしたら未来完了や過去完了を使うこともあるのかもしれません。しかし、この3つの時制だけで英語論文を書くことは可能であると思います。
英語論文の項目ごとに時制の説明をするような記事をまたいずれ書くかもしれません。


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