発表スライドの基本的な構成 ー学会発表のコツー

初めての学会発表でのスライド作り、何をどうしていいか分からないという方もいるのではないでしょうか。私自身も発表がうまいとかスライドが華麗とかいうことはないですが、一般論としてどのようにスライドを作ればいいかというアドバイスはできると思います。

本記事では学会発表の基本構成要素について説明します。

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発表の基本要素

学会発表には以下の5つの要素が最低限含まれていると思います。

  • イントロ(イントロダクション)
  • 目的
  • 実験(方法)
  • 結果と考察
  • 結論

これに加えて、結果に関する考察を独立した項目にした発表もありますし、結果と一緒に考察を書くパターンもあると思います。この各項目について以下で説明します。

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イントロ

まずはイントロダクションとして研究の背景を説明することが一般的です。通常想定される10分から15分程度の発表であれば、イントロのページ数は2、3ページが普通だと思います。考え方にもよりますが、最初の1ページはかなり一般的なイントロを用意する必要があります。その後に自分の研究に直接つながる、より専門的なイントロを用意した方が聴衆に親切でしょう。

一般的なイントロ

一般的なイントロに関しては聴衆の知識レベルを考えて作る必要があります。

例えば、シリコン太陽電池に関する研究発表をするとして、太陽電池一般に関するイントロにするのか、シリコン太陽電池のイントロを書くのか、それとももう少し自分の研究分野にフォーカスしたイントロにするのかは、発表する学会に依存します。「応用物理学会」で発表するならばシリコン太陽電池のイントロ、もっと狭い「研究会」で発表するならばフォーカスしたイントロになります。逆に大学の卒業研究発表であれば、学科によっては、太陽電池一般から話す必要がある場合もあります。

要するに聴衆の「顔」を見て、話す内容を決める必要があります。

自分の研究にフォーカスしたイントロ

一般的なイントロの次には自分の研究にフォーカスしたイントロが続きます。こちらについては自分の研究に直接つながる話なので書きやすいはずです(そうじゃなきゃだめですよ)。

気を付けたいのは、研究内容に詳しいために、今回の研究内容とは関係のない余計な知識まで披露してしまうことです。学会発表のイントロはあくまでも「この学会発表につながる」イントロです。これは実は英語論文でも同じです。英語論文の内容と全く関係のない知識を披露する必要はありません。研究に関する自分のあらゆる知識を文章にするのは「博士論文」を書く時までお預けです。

発表内容と関係ない知識まで書いてしまえば、イントロがぼやけてしまい、聴衆に分かりにくくなります。また、しゃべりも冗長になるでしょう。

自分の研究結果につながるようにイントロを書く

また、これはやや高等テクニックかもしれませんが、イントロを自分の研究結果につながるように書くことが理想的です。イントロで課題として挙げていたことが、結論で解決していれば、聴衆も素晴らしい発表だと納得してくれるでしょう。

しかし、あまりにも露骨だと興覚めになってしまいます。

【イントロ】 Aの値を求めることが課題であった。

【結論】Aの値を求めた。

というような発表では、なんというか、ちょっとダサいです。

もう少しイントロの方の課題を抽象的にして、そのうちの具体的な何かを解決した、ぐらいの結論が理想ではないかと思います。まぁ、そのような発表をするのはなかなか難しいですが。

目的

あなたの研究の目的を語る部分です。上記のイントロに基づいてなぜこの研究を行うべきなのか伝えなければなりません。

スライド1ページを用いて目的とする場合もありますし、イントロの最後のページ下部三分の一ぐらいを割いて目的とするパターンもあります。個人的に書きやすいと思うのは、ページの上半分を研究目的に直接つながる課題の説明に割き、下半分にそれに応じた研究の目的を書くパターンです。

聴衆側としても、この目的のページの説明さえ聞いていれば大まかに研究の内容が分かるので、聞きやすいです。ただ、これは研究内容にも依存すると思うので、そのあたりは自分で考えて選択してください。

実験・方法

1ページ独立したページとして作るのが一般的です。実験研究者であれば、合成などに使った実験装置の使用条件など書く項目と、分析用に用いた分析機器などを列挙する項目などがあると思います。

両者がごっちゃになってしまうと分かりにくいので、スライド内での配置を考えて見やすく仕上げてください。

結果と考察

結果と考察が、当然ながら、発表の核となる部分になります。ここでの図面づくりと構成が最も重要です。

図面の作成

まずは実験結果(または計算結果)から図面を作成してスライドに貼りつけます。普段の研究報告の段階からきちんと議論ができていればここで悩むこともないでしょうが、大学院の学生さんだとまだまだ学会発表を目の前にしてデータをまとめて、考えるということも少なくないでしょう。

大事なことは図面1枚に対して、言いたいことが一つあるはずだということです。その図面から言いたいことが何もなければ、その図面は使わない方がいいでしょう。

その図面から何が言えるのか、何を発表するのか考えながら図面を作りましょう。

結果の並べ方

学生さんにありがちなのですが、自分が実験を行ったり、考察を行った順番にスライドを作るのはNGです。どうしても実験をしていた際の記憶や、指導教員と議論した記憶などがあり、そこに引きずられてしまうようです。

一番大事なことはあなたが一番しゃべりやすい(論理的な)順番で話すことです。

よくあるのが、研究をしていて後からAということが分かり、そこから遡ってBという事実を確認する実験を行ったような場合で、「論理的には」BだからAだと言えるようなケースです。

このような場合、当然Bという結果を先に出し、Aが予想されるので実際に確認したら確かにAでした。という発表をしなければなりません。しかし、時系列的にAが先に分かっていたので、Aの次にBを出すようなスライドを作る学生が結構います。

そんな馬鹿なと思うかもしれませんが、今作っている自分のスライドを冷静に眺めてみてください。わざわざ論理的に話にくい順番にしていないか確認しましょう。

聴衆はあなたのスライドの順番に関して何ら強制しません。あなたが発表しやすい順番で話すのが一番です。そして、それは論理的に正しい順番のはずです。

結論

結論に関してはいくつか考え方というかフォーマットがあります。「結論」なんだから結論だけ書けばいいんでしょ、と思う人もいますが、実際には英語論文における結論と同じように発表全体のまとめの意味合いがあります。

フルフォーマットバージョン

やったこと、結果、結論の3つを書くパターンです。

(やったこと)
***を調べるために****を行った

(結果)
Aが分かった
Bが分かった
Cが分かった

(結論)
以上の結果から****ということが分かった

というようなフォーマットです。スライドデザイン的にはやったことが上部2割、結果が真ん中5割、結論が下部3割ぐらいの割合になります。

結果と結論

やったことはさすがにいらなくない?というパターンです。

結果を三つぐらい箇条書きにし、その下に結論を書きます。

結論のみ

個人的にはあまり好きなパターンではありません。3つぐらい並列で書いてあるけれど、結果と結論がごっちゃになっている場合も多い気がします。

ただし、新規物質の合成に成功した、というような一つだけ素晴らしい成果がある場合にはこのパターンで1項目だけ書いて終わるというのもプレゼンとしてはよいと思います。

まとめ


今回は、学会発表の構成要素とその大まかな書き方について記事にしました。私が知らないようなスライド形式もあるでしょうし、研究分野や学会のお作法などもあるかもしれません。全部信用してもらわなくてもいいですが、一研究者のアドバイスとして参考にしていただければ幸いです。

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